時々、どこか遠い記憶に触れたような感覚に出会うことがある。一つの音が、静かな風景をそっと呼び起こすことがあるからだ。この曲にも、そんな“記憶の気配”が静かに残っていた。白い布がふわりと揺れるような、控えめな気配がそこに漂っている。その静けさに触れたくなって、弾いてみようと思った。
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(上の楽譜とは異なるアレンジ)
Mariage D’Amour「ぷりんと楽譜」
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【夢の中のウエディング(Mariage D’amour)】について
「夢の中のウエディング(Mariage d’Amour)」は、フランスの作曲家 Paul de Senneville によるピアノ曲。もともとは 1978年に作曲され、1979年に Richard Clayderman によって初めて録音され、アルバム『Lettre à ma Mère』に収録された。
この楽曲は、数度の拍子変化を特徴とし、たとえば 4/4 から 5/4、さらに 3/4 へと移り変わるため、楽譜の見た目は難しそうに見えても、流れに身体を任せると自然に演奏できるとされている。
また、日本では「夢の中のウエディング」「マリアージュ・ダムール」と呼ばれ、英語タイトルでは “Mariage d’amour” と表記される。
ただし、インターネット上ではこの曲が誤って Frédéric Chopin の曲だとされ、“Spring Waltz(春のワルツ)” のタイトルで広まった例がある。実際はショパンの作品ではなく、誤ったタイトル・作曲者情報によるものだ。
【リチャード・クレイダーマン(Richard Clayderman)】について
リチャード・クレイダーマンは、1953年12月28日生まれのフランスのピアニスト。
本名はフィリップ・ロベール・ルイ・パジェス(Philippe Robert Louis Pagès)。
物静かで控えめな性格で、休日は自宅でピアノを弾いたり、音楽を聴いたり、読書をして過ごすことが多いという。
外出の際も運転手付きの車ではなく、自らBMWを運転したり、友人とバスや地下鉄を利用することがある。
楽屋での飲食物も、シャンパンやキャビアのような豪華なものではなく、
サンドイッチとミネラルウォーター、リンゴがあれば十分
と答えており、酒やたばこは一切たしなまない。
ピアノを集めることが好きで、自宅には多くのピアノを所有している。
その中には日本製のピアノも含まれている。
フジコ・ヘミングは彼について、
「少年のような笑顔で、キラキラ輝くような人。内面の教養がにじみ出るような輝き。気さくな感じのいい人。」
と語っている。
代表曲は『渚のアデリーヌ』『愛しのクリスティーヌ』『星のセレナーデ』などがあり、多くの作品が長く親しまれている。
小さな舞台裏|ピアノ収録の記録
リチャード・クレイダーマンの曲には、どれも静かな優しい気配がまとっている。
フジ子・ヘミングさんの言葉を借りれば、その音には“人柄の輝き”のようなものが確かに宿っているのだろう。
鍵盤に触れながら、その世界に少しでも近づけるだろうか、と考えることがある。
派手さではなく、そっと差し込む光のような音。そのやわらかさを、自分の手でも形にできたらと思う。
できることは、案外シンプルだ。
静かに座り、今日の指で今日の音を積み重ねていくこと。
さあ、練習しよう。

