音帆日誌

映画『シェルブールの雨傘』|ミシェル・ルグランの旋律をピアノで奏でる

ずっと心に残ってきた一曲。切なさの中に静かな情熱もあってどうしても惹かれてしまう。なぜこんなに深く響くのか。その理由を確かめたくて、ピアノで向き合ってみた。

『シェルブールの雨傘』|使用した楽譜とリンク

使用した楽譜

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『シェルブールの雨傘』|作品の基本情報

『シェルブールの雨傘』(Les Parapluies de Cherbourg)は、1964年に公開されたフランス・ドイツ合作のミュージカル映画。監督・脚本はジャック・ドゥミ、音楽はミシェル・ルグランが手がけ、全編が歌で進む独特の構成が特徴になっている。メインテーマは “I Will Wait for You” として広く知られ、場面ごとに姿を変えながら、物語の印象を支える重要な旋律となっている。

小さな舞台裏|ピアノ収録の記録

録音日は2021年6月24日。湿気の多い午後で、鍵盤に触れたときの感触が少し重く感じた。

大好きな曲ほど落ち着いて弾きたいのに、どうしても気持ちが先に動いてしまう。そこで「冷静に…」と自分に言い聞かせながら始めたものの、静かに寄りすぎると今度は音がそっけなくなる。

戻そうとすると情熱側に傾く。その行ったり来たりが、自分の中の温度つまみが勝手に回っているようで、思わず苦笑してしまった。

テイクは7つ。途中で「ああ、今日はこういう調子か」と少し笑いながら続けていたが、この不安定さも、この曲になると毎回ついてくる“お約束”のようなものだと思う。

最後は、冷静と情熱のあいだに落ち着けたかな?どうだろう。その曖昧さごと、この日の収録だった気がする。

切なさの
冷熱めぐり
ゆらぐ音