あの日、あの時間、あの場所にいられたこと。

感謝の気持ちが自然に湧いてくる。だけど誰に感謝しているんだろう。ユジャ・ワンだろうか。音楽だろうか。

分からない。分からないけれど、ありがたい。

そんな不思議な感覚だけが残っている。

続く余韻

今日は2026年6月18日。リサイタルから3日が経った。

普通なら日常に戻っている頃だ。ところが今回は違った。まだ心のどこかが、あの日のサントリーホールに置いてきぼりになっているような気がする。

演奏会のあとに感動することはある。けれど、ここまで長く余韻が続いたことは記憶にない。

何に心を持っていかれたのか。それすら、まだうまく言葉にできない。

異次元だった

とにかく凄かった。圧巻だった。そして異次元だった。

私はピアノを弾く。だから演奏を聴くとき、どうしても技術的なことが気になる。音色やタッチ、ペダル。そういうことを考えながら聴くことも多い。

でも今回は違った。そんなことは途中からどうでもよくなってしまった。

ユジャ・ワン。

ピアノ。

サントリーホール。

そして観客。

すべてが一体になっていた。少なくとも私にはそう感じられた。

演奏を聴いていたというより、その空間ごと体験していたような感覚だった。あの場にいた全員が、一緒にどこか別の世界へ連れて行かれていたのかもしれない。

終演までは約150分だったそうだ。

後から知って驚いた。

途中、お腹が鳴って時間の経過を思い出した以外は、本当にあっという間だった。

戻れない感覚

最近、何度も考えていた。

何のためにピアノを弾いているんだろう。

続ける意味はあるんだろうか。

もう十分じゃないか。

そんなことを思う日もあった。

だけど今回の体験のあと、少し感覚が変わった。いや、変わったというより、思い出したのかもしれない。

音楽は本来、人をこんなふうに夢中にさせるものだった。

そんな当たり前のことを、私は少し忘れていたのかもしれない。

何が変わったのかは、まだうまく説明できない。ただ、あの日を境に、以前と同じ感覚では音楽に向き合えなくなった気がしている。

だから今は、技術のことでも、評価のことでもなく、ただあの日の体験に感謝している。

あの日、あの時間、あの場所にいられたことに。